bitcoin maniac 

ビットコイン情報局

「ビットコインはそもそも出来が悪いです」の出来が悪いです

「ビットコインはそもそも出来が悪いです」 http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20140311/260891/

この日経ビジネスの記事は、単にPtoP型決済システムの否定としてなら問題ありません。ですが、PtoP型を探るというポーズを取りつつ、銀行など仲買人を立てる従来型システムに落とし込もうとしているのが嫌な感じです。解説の岩村氏が、微妙な理解のまま滔々と語ってしまったところに問題がありそうです。

たとえば、PtoP型の話をしているのに

せっかく低コストのPtoPシステムなのだったら、渡した側と渡された側と、それからせいぜいで認証機関、この3者ぐらいでトランザクションは結了し、かつ認証機関はその料金を2人から取ればいい。

と昔ながらの(=PtoPでない)決済システムを代案として持ちだしてしまう所に岩村氏の混乱が見られます。[追記: 担当編集Y氏より、このサーバ・クライアント型を連想させるくだりは編集ミスとのお返事を頂きました]

また氏は、ビットコインの取引において、コストが送り手・受け手以外のところで発生していると勘違いしているようです。取引の認証において電気代は発生しますが、この認証プロセスはマイニングそのものであり、電気代を上回る利益が得られるため人々は参加しているわけです。氏は否定していますが、市場メカニズムがバリバリに働いているのです。

ビットコインの構造としてSHA-256を出してしまうセンスにも凄みがあります。

ビットコインの構造は「SHA256」というハッシュ関数(長い数字列を短く畳み込む手法の一つ)と、「チェーン型署名」の組み合わせです。

本当のビットコイン技術の骨子は、ブロックチェーンと呼ばれる、連結した暗号署名によって作られる取引台帳と、プルーフオブワークと呼ばれる、計算力をもってP2Pネットワークでの正当性を決めて2重支払いを防ぐ方法の組み合わせにあります。SHA-256はプルーフオブワーク実現の素材として使われているため大間違いではありません。ですがプルーフオブワークをSHA-256と表現するのは、自動車を鉄塊と呼ぶに似た感があります。

送金の不可逆性だとか、ウォレットのセキュリティ管理だとか、相場のボラティリティだとか、正体不明のUSドル-ビットコイン交換所だとか、胡散臭さやイマイチ感はビットコイン生態系のあちこちに見つかります。でもこの記事で触れられている「うさんくささ」や「違和感」は理解不足から来る的外ればかりなのです。(ただし、『無駄な電気は使わない』という方向性においてビットコインは宜しくないという指摘はもっともだと思います。)